■ゴールデンウィークは高い山はまだまだ雪が多く、またこの季節は天候が急激に変化しやすいので、自分のスキルと経験ではいつも悩ましい。春山は固い根雪が出てきているので、降雪があればすぐに雪崩やすく、また逆に降雪がなければ、急斜面でかるく転んだだけですぐに滑落につながりやすい。天候が安定して雪が柔らかければ容易だが、天気の流れを見ていると今年は少し難しい感じがしていた。

■であれば、貴重な長い休みを活かして、去年と同様に天川村を起点として雪がほとんどない大峯奥駆道を長くテント縦走をしたいところではあるが、今回は多忙のこともあって、準備も体力も整っておらず、到底やりきれるとは思えなかった。それではそれ以外で2000m以下の山ならと思って、いろいろ考えた末にたどりついたのが伊豆・天城山脈の縦走だった。このルートは、伊豆半島の中央付近に東西およそ17キロにわたる登山道があり、東側に万二郎岳(1299m)、万三郎岳(1405m)がそびえる。正確には「天城山」という山はなく、これらを含む連山を総称して天城山脈、天城連山と名付けられており、日本百名山の一つである。17キロという長さは、実は高尾山口駅から高尾山−陣馬山−陣馬高原下までの縦走路の距離とほぼ同じであり、日帰りの縦走には調度よい距離であった。また何よりよかったのは、伊豆は自宅からそれほど遠くなく、私鉄を使えば往復で3000円から4000円程度で行ける上、温泉宿には事欠かない。ツイッターのタイムラインに流れていた八ヶ岳や北アルプス方面に出かける人たちの賑わいに後ろ髪を惹かれつつも、伊豆の地形図を買い、読図と行程を作成し、彼女と日程と段取りの検討を重ね、天気図を読んで、自分の登山の準備をした。

■立てたプランは、初日に伊東で宿泊、翌日に伊東からのシャトルバスに乗って天城高原ゴルフ場から朝9時に入山、夕方に天城峠を経て天城トンネルに下山し、湯ヶ島温泉の旅館に宿泊、翌日は浄蓮の滝や修善寺を観光しながら三島まわりで帰宅というものだった。朝9時という時間は登山にしては非常に遅い時間だが、天城トンネルからのバスは比較的遅い時間まで出ていたので、それほど問題ないであろうという結論に至った。ちなみに、今回の計画は、自分のツイッターにおける山の先輩である@Masakoさんの山行記録を参考にさせて頂いた。とても感謝です。→ 天城山縦走(1) – 〔Let’s take our time! ふたりで山歩き〕

■4月30日(土)。自宅を朝7時過ぎに出発し、南武線、小田急線、JR線を乗り継いで、午前10時過ぎに伊東着。そのまま商店街と海を一回りしてからバスでツツジ祭が行われている小室山へ。リフトを素通りして徒歩のルートで登ると、東には大海原、西には登る予定の天城連山、そして眼下には真っ赤なツツジという好展望な山頂。初めて見る天城連山は、予想以上にスケールが大きく見えて心が躍った。ツツジは満開かと思うくらいの咲きっぷりで、小高い丘から見るとまるで赤い絨毯のようだった。

■この日の宿は、彼女のたっての希望で「ハトヤ」ホテル。自分には一生泊まることのないホテル(笑)かと思っていたが、温泉卓球に、ゲームコーナー、プール、広大な宴会場でのバイキング、真っ赤な絨毯と「昔の」おしゃれっぽい家具など、時代から動いていないベタな昭和っぷりが不思議な空間に感じられて意外に楽しかった。

■宿に入ってから天気を確認したところ、残念ながら、翌日はかなり強い風雨となる予報となっていた。やはりこの時期は天気が変わりやすい。少しの雨ならともかくこの地域は風が比較的強いので、無理をせずに翌日はバスで修善寺経由で湯ケ島まで行って宿泊し、天城縦走は最終日に延期して、当初の予定とは逆に天城峠側から登り、伊東まわりで帰ることとした。逆から登るほうが登りが多くなるのでやや時間もかかるが、旅館を早出してタクシーで旧天城トンネルまで上がることで何とかなるだろうという目論見。

■5月1日(日)。というわけで、二日目は湯ヶ島へ向かう前にゆっくり伊東を観光。ハトヤでバイキングの朝食を取ってチェックアウトののち、そのまま直通バスでサンハトヤの海底温泉で朝風呂。再び伊東駅へ戻って、商店街で買い物をし、伊東市指定文化財である温泉旅館「東海館」を見学した。そののち伊東駅前からバスに乗って修善寺に向かう途中で、ザーザー降りの雨が降ってきた。午前中は比較的良好な天気だったが、やはり延期にして正解だった。

■修善寺からのバスを湯ヶ島温泉口で降車後、湯道をテクテク歩いて旅館「白壁荘」。歴史では東海館にはもちろん及ばないが、文人も多く利用したという宿で、巨石・巨木の露天風呂に、民芸調の館内、美しい庭園など、素晴らしい旅館であった。館内は至る所に極め細やかな気配りやさりげない演出が施され、温泉も川沿いの客室も居心地が良すぎて、プランが変更されて早めのチェックインになったことがかえって良かったと思えた。しとしとと山に降る雨を眺め、心地良いカエルたちの鳴き声を聞きながらの露天風呂に、久しぶりにのんびりと羽根を伸ばすことができた。

■続く。